先日、Tribunalからの呼び出しに応じ、11:15に出頭してきたKent。Tribunalとは、日本語で言う簡易裁判所のこと。簡易裁判所の意味を調べると、「請求金額が一定金額以下の民事事件や、罰金刑に該当する刑事事件など、比較的軽微な事件を主に担当する」とありました。Kentの場合には、「請求金額が一定金額以下の民事事件」に相当するのだと思います。
これまでの経緯はこのブログで書いてきましたが、簡単に言うと、アパートを出て行くときに、Kentとは無関係の傷やダメージなのに、「Kentがやった」と不動産屋から言われ、法外な請求金額を要求されたので、「そのお金は払いたくない」と申し立てをしたところ、いつの間にか裁判沙汰になってしまったというわけなのです(Kentもビックリ 笑)。シドニーでローカル企業相手に裁判を起こしたという日本人も少ないと思いますので、簡易裁判所で何が起きたのかをこの場で一気にご紹介いたします!
簡易裁判所があるのは、Kentのオフィスから徒歩5分の中心地。ご立派なゴシック建築を想像していたら普通のオフィスビル。これから何が起きるのかまったく分からないKentは、不安と「負けたくない」という気負いが入り混じりながらオフィスの入り口をくぐりました。
時間通りに決められた部屋に行くと、5-6人くらいの人がすでに椅子に座っており、「だ、誰?味方?敵?」と更に不安は高まります。まず最初に裁判長的な人から出欠を取られ、今日の流れの説明がありましたが、簡易裁判所のシステムはこうです。
まず最初に対立する両者が個室に入り、意見を主張し合います。その話し合いで両者妥協点を見つけ、決着すれば両者サインをしてそれでおしまい。もし平行線を辿り両者着地点を見つけることができなければ、先ほどの部屋に戻り陪審員に妥協点を決めてもらうということでした。最初に部屋にいた5-6人の人は、その陪審員たちだったのです。
予め無料の日本語通訳をリクエストしていていましたので、Kent、通訳さんそして不動産屋からいつもの女性スタッフ。合計3名で話し合いがとうとう始まりました。
Kent:「そもそも私がなぜこんなところまで来なきゃいけなかったのか?あなた、そこ理解していないですよね。まずそこからきっちり理解させたいのですが」
不動産屋:「ふっ、面白いじゃないの」
と、鼻で笑います。くそーーー、ぎゃふんと言わせてやる!!
Kent:「貴女からこういう嘘を吐かれましたよね。確認すべきところに確認して、電話1本ですぐに分かりましたよ。それが嘘だってことが。どうやって貴女のこと信用してこれらのお金、払えるんですか?その延長線上がここですよ」
不動産屋:「あれは嘘じゃないわ。事実としての表現を少し変えただけよ」
Kent:「ソレをこの世では「嘘」と呼ぶのですよ」
不動産屋:「で、次はナニ?」と睨んできます。
まー、こんなことの繰り返しです。妥協点を簡単に見つけられるはずはありません。
もうKentは慣れましたがこの不動産屋の女性スタッフ、ものすごく高圧的で反論しようものなら食ってかかってくるタイプの女性で、彼女を見ていると、「英語もろくにできない男が通訳通してちんたら話してんじゃないよ!こっちは忙しいんだ!」と苛立ちの雰囲気を体中から放出しています。かわいそうな通訳の日本人女性、この不動産屋の女性とやり取りが始まるや否や、恐怖で声、手ともにブルブル震えだしているではありませんか!いやいや、この高圧的な態度に気圧されてはいけません。Kentも主張すべきことはしっかり主張します。
この女性の厄介なところは頭の回転が速いというか、ずる賢いというか、Kentが用意したてきた彼女の弱みをここぞとばかりに突いても、スイッとかわします。「そんなのへっちゃらよ、もっと来なさい!次はナニ?」と涼しい顔で睨みを効かせてきます。
結果を言うと、ここに書ききれないほどのやり取りをこんな調子でしましたが、妥協点は見つかりました。結局参考にしたのはこの手のケースを通訳として何百と経験している通訳さんのアドバイスでした。ひとしきり不動産屋とやり合ったあと、その場で通訳さんに聞いてみました。
Kent:
これまでのやり取り聞いて、この件、どう思われますか?私的には彼女のOffer(請求額のディスカウント)は納得できないのですが・・・。
通訳さん:
これまでの経験からアドバイスさせていただくと、今ここで彼女のOfferを受けたほうが利口です。Kentさん、不利ですよ。最初から存在したであろう壁やその他の傷を、入居の段階で「はじめからありました」とリストに申告せずにサインしています。Kentさんが1年経って「自分はこんな傷つけていない!」といくら叫んだところで、陪審員の論議の土台には乗りません。それが現実です。次のステップの陪審員判断になったところで、必ずそこを突かれますので、彼女がOfferしている金額よりも悪くなる可能性があることを考えた上で判断してくださいね。
この通訳さん、通訳しながら震えていた割には冷静なアドバイスをしてくれました。不動産女性がオファーした金額の一部は、壁の塗り替えA$590(約5万円弱)を50% OFFしてA$295(約2.5万円)という内容です。この傷は正直Kentがつけたものではありません。何十回とその場で訴えましたが、リストに無い以上話しは堂々巡り。50%OFFだろうが90%OFFだろうが、それを受け入れる以上その傷をつけたと認めるような気がしてならなかったのです。だからどんなにディカウントされても認めたくなかった。しかし、通訳さんは、だったらなぜその傷がはじめからったあったと申告しなかったの?それがすべての落ち度なのですよと教えてくれました。
Kent、考えた末に手を打ちました・・・。
帰り際、不動産女性はこのような趣旨のことをKentの目をしっかり見ながら言いました。
「Kent、あなたがテナントとして入居していた時、私たちはいい関係を保っていたわよね。最後の最後にこんなことになって非常に残念。私は時間を費やされ、こんなところまで引っ張り出され、まったく時間の無駄だったわ。じゃ、元気で」と、大きなお腹を抱えて、クルッと顔をそむけて立ち去っていきました。
隣で通訳さんが苦笑いをしています。総合的に見て、Kentは負けたとは思っていません。そしてできることはすべてやった上での結果と理解していますし、実際随分負担費用額は落ちました。この女性、正直いけ好かない人だけど、会社と部屋のオーナーを守るために、この人も身重の身体で一人戦っていたわけです。「こういう人だ」と思えば腹も立ちません。
お客様の中に、シェアをしたけどBond(預入金)が戻ってきませんというご相談をよく受けます。このような件は個人的な問題ですので、私たちが仲介することはできませんが、私の場合には個人的な問題では済まずに裁判沙汰になってしまったというケースでした。Kentが一番ビックリです。アパート借りる人もシェアする人も、細かい傷やダメージは、きちんと写真にとっておきましょう!それがこのようなトラブルを防御する術です。
簡易裁判所のビルから出ると、初夏の強い日差しが顔を照らします。さて、オフィスに戻って仕事、仕事。

