My 9.11

911日を目前に、テレビでは9.11の様子をドキュメンタリータッチに、遺族などの話しを織り交ぜながら制作された番組をよく目にするようになりました。

 

2001911日。今から10年前にもなるんですね・・・。

 

Kentは仕事柄お盆シーズンはお客様出発のピークを迎えるため、毎年夏休みは9月中旬に取るのが自分の中では慣わしになっていました。

 

その日はGuam島での34日を楽しんでいる真っ最中。帰国を翌日に控え、朝、何気にテレビのスイッチをひねったところ、なにやらニューヨークのどこぞのビルからモクモクと煙が出ており、「あや、火事かい?」と目が釘付けになった瞬間、二機目がもう一方のタワーへ衝突。

 

「へっ?な、なにコレ?映画?」

 

ニュースの中ではアナウンサーが興奮状態で叫んでいます。「コレ、映画じゃない!」そのニュースの中でニューヨークではどこもかしこも交通閉鎖で空港閉鎖も時間の問題でしょうとのこと。そして、これは事故なんかじゃない。「テロ」であると気づくに時間はかかりませんでした。

 

その時同室だった友人はシャワーを浴びており、少し焦ったKentはシャワールームのドアをドンドン力任せに叩き、友人にすぐ出てくるように叫んでいました。驚いたのはその友人で、シャワー中に一体何事か?と大慌てで出てきたのでした。

 

しばらくニュースに釘付けになると、「帰国できなくなるかも・・・」と不安がよぎります。そう、Kentたちのこの時の心配は、人様の命やテロに対する怒りや理不尽さよりも、「空港閉鎖⇒延泊⇒いつ帰国できる?⇒延泊料金は保険でカバーできる?」と、これらのことがまず頭に浮かんでいました。ちなみにKent達は、この旅行のコンセプトのひとつとして、「年に一度のホリデー。少し贅沢しようか?もうそろそろいい歳だし、ホテルだけでもラグジュアリーにしない?」なんて話し合い、なんとグァムでは一番費用の高い「Westin Hotel」にご宿泊だったのです。延泊したらお金がいくらあっても足りなくなる・・・。重大問題である。

 

幸運なことに、そのホテルの2階部分には、各旅行会社のカウンターが並んでおり、お客様相談を受けるスペースになっておりました。大急ぎで着替えて2階へ行くと、すでに情報を求めた日本人観光客で溢れているではないですか。他のJ社、N社、K社などは日本人スタッフがおりましたが、Kentが申し込んだA社はEnglish Speaker Only。英語で今後のことを聞くと、「No Information」を繰り返すだけ。分かったことは延泊料は旅行会社の責任外で、自己負担であること。通常の旅行保険では、テロや災害による延泊料負担は免責事項であるということ。

 

そのスタッフもかわいそう。だってテロは起きたばかりで情報なんかないのは誰でも知っている。それを観光客はよってたかって情報を求め、激昂し、その上安心を求めてくる。それでも「No Information」を繰る返すそのスタッフはあまりにも能が無かった。すぐ隣のカウンターのJ 社、N社の日本人スタッフは、情報が無いなりにお客様の不安を取り除くために、今後考えられる可能性や延泊手配や他のホテルへの振り替えなどの情報をしきりに説明していました。

 

聞き耳を立てて、隣のJ社のスタッフが言うことを聞いているうちに、このA社に頼っていてはダメだ!早く自分で動かないとホテルが無くなる!Westinに延泊?「No Way!!」である。人垣を掻き分け部屋に戻り、日本から持ってきたグァム島ガイドのホテル一覧を広げ、予算に合うところを片っ端から電話。とにかく電話だKent!!

 

「こんな状況でしょう?みんな延泊ですよ!部屋?あるわけ無いでしょう!」と冷たい返事ばかりが続きましたが、それでも何軒目かでは空きがあるという。しかし、街の中心部からは車で10分の郊外。でも1$100を切っている・・・。予算内だ。場所なんかどうでも良い、よし!ここだ!!

 

何とかホテルをゲットしたことで野宿をせずに済んだ安堵感から急にお腹が減り、友人と街へ繰り出すことになったKentたち。空港はとっくの昔に閉鎖が決定しており、Kent達を含む観光客全員がこの島に閉じ込められました。

 

街中では「観光客にはドリンク1杯サービスします」など、観光客をいたわった貼紙をあちこちで見かけます。その貼紙のあるレストランで、無料のソフトドリンクをご馳走になりながらとても複雑な気分に浸っていたKent。「きっと会社では今頃NYCに留学しているお客様の安否確認でパニックだろうな・・・」

 

車で10分離れた、聞いたことも無い日本人の名前がついたそのホテルは、意外に立派で清潔なホテルでした。そしてそこは、あの街の喧騒が嘘のようなこの世の楽園だったのです。

 

Kentたち以外にこのホテルに客はいるのかな?」

「静か過ぎるよね」

「えっ、ナニこのプール。目の前は一面海だ」

「会社は一番忙しい時なのに」

「でもそんな時に南の島にいるKent・・・」

「帰国したくても飛行機が飛ばない」

「フフ、ホリデー延長?」

「理由なら確固たるものがある」

「こりゃ、楽しむしかないか!!」

 

と、もうジタバタしても飛ばないものは飛ばない。ここにいるしかない。同僚たちよ、スマナイ!Kentは日がな一日この目の前が一面海のプールで過ごします。

 

不思議なもので、ホリデー中は、同僚のことを思うと「スマナイ」という気持ちが少し残るものです。日本人ですね(笑)。いない間に何かトラブルが起きていたらどうしようという不安感もあります。しかし今回は帰りたくても帰れない。会社に何があろうとこの完全密室の島から出ることができない。だからこそホリデーの罪悪感から開放された瞬間だったのです。

 

空港が開き、ようやく帰国できたのは3日後のことでした。真っ黒に日焼けした顔を隠すように恐る恐る会社に出社してみると、まるで戦争後の状態でした・・・。数日間家にも帰らずに、お客様の安否確認に追われたスタッフもいたようでしたが、Kentがお出ましになった時にはかなり落ち着いていたタイミングだったのです。

 

同僚や部下からは、「大事な時にいないKent」とからかわれたのは言うまでもありませんが、そうやっていじってくれたことにより、帰国後にどっぷり漬かった同僚や部下への罪悪感は少し和らぎました。

 

このように、帰国しようが無い状況から思わぬ感情が沸き立ち、お気楽に過ごしてしまった9.11でしたが、この日が近づくと、やはり尋常じゃなかったあの日のグァム島の様子と、開き直って楽しんでしまったという罪悪感を少し思い出すKentなのです。 

 

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